Redesigned TO NINE Inc.

西洋絵画では多彩な色を使って表現するのに対して、水墨画は墨一つで表現します。
最小で無限の世界を創り上げる表現、単純でありながら奥深い美しさ、見る者次第で多彩となるユニークさ。
切り口は何にせよ、見るものの想像力を掻き立てます。
制約があるからこそ表現は尖鋭化し、制約があるからこそ創意が働くように、今回自社サイトをリデザインするに際して、わたしたちはいくつかの制約を掲げました。

  • 墨は五彩を兼ねる
  • 機能とデザインの融合
  • 光を示す

墨は五彩を兼ねる

WEBのトレンドはミニマルでモノトーン、当たり障りのないデザインが主流ですが、本来「黒」という色は使い方に寄って強烈な個性を放ちます。

例えば1980年代、コム・デ・ギャルソンやヨウジヤマモトが当時タブーとされていた黒を前面に打ち出したコレクションを発表し、世界に「黒の衝撃」と謳われ世界にインパクトを与えました。
歴史を遡れば、黒(墨)のみで表現する水墨画は、「自然界に溢れる色彩の再現を放棄する」ことを立脚点としており、そもそも黒は不自然であり特異なのです。
「墨は五彩を兼ねる」とあるように、墨一色の濃淡を駆使して「多彩」を表現し、油絵のような下絵もなく、直しのきかない繊細かつ大胆な表現。
このことからも黒の表現は「無難」ではなく「難解」といえます。

この難解である「黒(墨)」を使いこなせるかどうか、わたしたちの意欲と創意を掻き立てるのには十分な制約となりました。

機能とデザインの融合

この画像は1985年にパテント登録されたAPPLE社の電話機デザインですが、もし装飾染みたこの電話機が世の中に発表されていたとしたら、今のiPhoneのように洗練された無駄のない機能美を作る会社になっていなかったかもしれません。

建築でも服でも機械でも、本当に美しいデザインは機能としての役割も担います。なんとなしに付け加えるような飾りは、単なる装飾であって、課題解決になるデザインではありません。WEBでも同様だとするのであれば、不用意にボタンを設置したり、下線を引いたり、見出しを付けたりすることが美しいデザインかと問われたら疑問に思うはずです。
それらがなくとも機能するデザイン美を再考しながら設計しました。

光を示す

わたしたちの行動指針のひとつに、DO BASIC, GO LIGHT(当たり前をこなし、正しい道を照らす)という言葉を掲げています。
正しい道を照らし示せるよう、黒というデザイン制約の中で、わたしたちが伝えたいメッセージに光を当てるモーションを加えました。
ひとつひとつの言葉に光があたり、少しでもメッセージに共感してくれる人や仲間が増えたら嬉しい限りです。

2014年の創業から5年が経ち、会社の輪郭が徐々に解像度を増し、自分たちが何者であるかを言語化できるようになりました。
この5年間でブレずにやってきたことが何かを振り返ると、「モノづくり」「ブランドづくり」「価値づくり」です。

一つ一つはありきたりに聞こえますが、これらすべてをトータルでやりきることは本当にハードで労力がかかります。
ただ、どんなに苦労があろうと、意思と意義を持って仲間たちと創り築きあげていくことは何ものにも代え難い価値があります。

わたしたちは「価値の無いことをやらない」と決め、自分たちの価値基準で取捨選択し、やること、やらないことを常日頃から見定めています。
「マネジメントしない」「出社しない」「営業しない」こともその一つ。

事業も働き方も、価値基準は自分たちです。
社会通念が立ちはだかろうと、他の誰かが否定しようと、自分たちの価値基準を信じて突き進むことでしか、新しい社会の価値基準は生まれません。

モノづくり、ブランドづくりを通して、新たな価値づくりをこれからもしていきます。